関西の冬の味覚を代表する“海の幸”と言えば、寒ブリ、フグと並んで、日本海で獲れる『ズワイカニ』を思い浮かべるという方も多い。

ズワイガニの雄
ズワイガニの雌

 つい先日、コロナ禍で暫くご無沙汰していたが、私は、石川の金沢港の毎夜7時半から夜中まで行われるプロだけが立ち入りを許される『夜セリ』を見に出かけた。何百と並ぶその箱の中には、仰向けで「高値を付けてくれ」と言わんばかりに元気よく脚を動かす獲れたてのズワイカニで溢れ、競り時間になると、買い付けるプロの目利き仲買人たちの威勢の良い声が響き渡り、そこは男たちの真剣な仕入れの戦場となり、何とも勇ましい圧巻の光景が広がっていた。

品種は同じズワイカニでも、古くから兵庫、鳥取では『松葉かに』、京都では『間人かに』福井では『越前かに』と呼ばれ、明治以来皇室への『献上かに』としても知られている。

近年、石川でも、他地域に倣い、加賀地方の『加』能登半島の『能』を取って『加能かに』とブランド名が付けられた。いずれも、全て500g~1㎏を超えるような立派な体格をした『雄のズワイガニ』の各地方での敬意を払った呼称である。

今年の初セリでは、500万円の値が付き、地元金沢では全国ニュースで有名になりました。

加納カニ

 一方、ズワイカニの雌は、体格が大きく異なり、100g~300gと圧倒的に小ぶりである。

ただ、茹でて甲羅を剥がすと、その甲羅の中には、たっぷりの『カニ味噌』と『カニの卵』がぎっちりと詰まっている。その甲羅を器にして、味噌と卵とカニ身を贅沢に『カニの宝船』のように盛り付けて食べる至高の味は格別で、「どんなカニを食べるよりこれが好き」と通がうなる程、究極の美味なる味わいである。

ズワイカニの雌
『香箱カニ』の甲羅盛り

 兵庫県・鳥取県では、親ガニと呼ばれているが、福井では、背中に子がいるから『背子かに』、石川では、方言で『かわいい』『おませな』を『こうばく』と呼び、そこから『香箱かに』と古くから何とも素敵な名前が付けられている。

 『雄のズワイカニ』は、『高嶺の華』で、昨11月~12月『GO TOキャンペーン』真っ盛りであった当時、日本中から大挙して冬の日本海のカニの本場を訪ね、地元の名物ズワイカニの料理がセットになった宿泊で満室が続いたり、クーポンを使って地元で沢山の高額なお土産を買ったりしたため、かつてないほど浜値が跳ね上がり、産地で史上最高値を付けたのは記憶に新しい。海外からも、年末年始には、この最高品質のカニは贈答も含めて、引き合いが多く、これからもますます『高嶺の華』となると思われる。

むしろ、年が明けて、需要が落ち着き、シーズン終盤となった2月~3月中旬頃がお手頃に手に入れられる狙い目で、改めてその時期に『日本一のカニ』を召し上がって頂く企画を計画したいと考えている。

『雌の香箱かに』は、資源保護を踏まえて、産卵時期を確保するために、漁獲時期が、全国的にズワイカニが解禁となる11月から始まり、雄が3月20日頃と決まっているのに対して、一足早く12月一杯迄漁期としているところが多い。つまり、たった二か月しかお目にかかれない希少品なのだ。地元金沢の人達には、高価な雄よりも、むしろ比較的廉価で味わいの深い『香箱』を好まれているのだ。

弊社では、年末年始お奨めのカニとして、北海道、道東のウニを食べた黄色い味噌たっぷりの『道東前浜の浜茹で毛かに』と、活け又は活けが沢山獲れた時に高鮮度のまま弊社オリジナルの凍結をかけた、よりリーズナブルにお求めいただける『香箱かに』を取り上げたい。

『道東前浜の浜茹で毛かに』
『香箱かに』

 『香箱かに』の『かに味噌』や『かにの卵』は、大変稀少な美味しい味わいであるが、脚は細くても身がぎっちり詰まってる。

石川出身の大変有名な和食の料理人の方の厨房を訪ねた時に、茹でた『香箱かに』の脚を何本か並べて、すりこ木を転がして上手く身を取り出しておられていたのは、長年の経験と知恵が為せる技で、とても感心したのを覚えている。

脚が小さく細いからと言って、全て味噌汁の具にしたのでは、あまりに勿体ない。お手間はかかるが、是非根気よく挑戦して頂きたい。身を出した後の殻だけでも入れれば、十分に美味しい出汁が出て、一味違う『お味噌汁』に様変わりしてくれる。

多くの方が、なかなか召し上がる機会の少ない希少な『香箱かに』。今年は是非、その類いまれなる究極の美味に、ご家庭でも挑戦して頂きたいと思っている。

代表取締役 柿澤克樹

数ある食材の中でも全国津々浦々の弊社パートナー生産者の魂籠る日本の食材は「世界の財産」です。
その信念に基づき弊社はサイト名を『日本食財.com』と名付けました。

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