本州の始まりの地、日本海、津軽海峡、太平洋と三方を海に囲まれたもう一つの県が青森県である。ここはかつて、私の祖父が行っていたのだが、北海道からの生産物を一手に集め、消費者に届ける北の玄関口であった。飛行機の往来が盛んになった今日、北海道が便利さを増して、むしろ遠い存在となってしまったような感がある。

空から見た下北むつ

世界遺産の白神山地を筆頭に、春の弘前城の桜、夏のねぶた祭り、秋の十和田湖の紅葉、冬の八甲田山、観光資源は大自然そのものを売りにするものが多い。大いなる自然派、生産地としても最高のインフラを生み出す。そこに暮らす人々は、地味でまじめな気質で、極めて勤勉な生産者が多い。

世界遺産白神山地
弘前城の桜
夏の青物ねぶた祭
十和田湖の紅葉

津軽のりんご、田子のにんにく、日本一の長芋、陸奥湾の平目・津軽海峡の本マグロは言うに及ばす、それ以外にも隠れた名品が数多く埋もれている。陸奥湾の甘いホタテ、こだわり極上イクラの醤油味、十三湖の大和蜆、津軽海峡の桜マス、国産最高品質を誇る銀の鴨、特産地鶏青森シャモロックプレミアムメス、牛肉のうまみが美味しい日本短角種、寒冷地だからこそ可能となる完全無農薬のお米・野菜、遠隔地だからこそ採れる希少で珍しい天然きのこ、糖度の高いメロン、国内生産の90パーセントを占めるカシス、特産のにんにくを餌に育てたガーリックポーク、栗のような食感のアピオス等々。北の遠隔地だからこそ、本来のありのままをこだわりをもって伝える生産者が一生懸命に作り続ける本物が、ここには数多く存在する。

 青森県は、約20年前全国に先駆けて素晴らしい産品と生産者を全面的に支え、県内品を全国に発信するために総合販売戦略課を知事の肝いりで立ち上げた。全県一丸となった取り組みは、安心で安全な本物を追い求める現代の消費者ニーズとあいまって、力強く歩みはじめ、今や世界ブランドとして認識されつつある。

 時代の進化に取り残されたかに見えた地域が、又、脚光を浴びて主人公となる新たな時代のフェーズに入ったかもしれない。