北海道から三陸海岸にかけて北日本では秋の訪れを知らせるように、母なる川に遡上する鮭の姿が見られる。その光景は、生命を受け継ぐ自然の逞しさと悲しさを目の当たりにしてくれる。その光景は、凄まじく迫力に満ち溢れている。
鮭は、母なる川の匂いを覚えていて、大海で青年期を過ごして、産卵期を迎えるとオス・メス共に、生まれて幼少期を過ごした母川に産卵に帰ってくる。河口から産卵に適した川の上流まで遡上する。その道のりは、正に過酷を極め、河川はどんどん細く険しくなり、沢山の石ころや時には自らの体長よりも高い壁を飛び越えて、オスは鼻が曲がり風貌の逞しさを増して体を赤く色付かせて鯉の滝登りのように支流を登っていく。体は傷つきながらも必死に駆け上がる。中には、途中の厳しさに息絶えるものや、人間や熊などにつかまって、産卵場所まで辿り着けないものもいる。
体中傷だらけになりながらも、体力・気力に勝るのみが上流の産卵場所まで辿り着き、最後に残った力を振り絞って卵を産み、そこに何匹ものオスの鮭が精子をかける。つまり、選ばれたメスと更に選ばれたオスのみが子孫に自分の遺伝子を伝えることができる自然の掟なのだ。精根尽き果てた親の鮭は、そこで命を全うすることとなる。自然の摂理とは言え、壮絶なドラマのような一生である。
人間は、そんな鮭を沖合で川に近づいてきたところを、また、川に遡上する途中の物を産卵する前に大量に漁獲する。一方で、来年以降も多くの鮭がまた戻ってくるように、バイパスを用意して遡上させ、そこが孵化場に繋がっていて、そのプールにたどり着いた個体から人工的に卵を取り出し、オスの精子をかけて人工ふ化をさせ、稚魚を沢山育てて、河口から海に放流し、4年後に母川に多くの鮭が帰るのを待つのだ。人間による拡大再生産が行われている。人間は、何とも自分勝手なものである。食物連鎖の最上位にいるとはいえ、こんなドラマチックな鮭やイクラを自ら生きるために頂くのであるから、大切に美味しく食さなければ罰が当たるというものだ。
40年以上も前の話だが、私が家族とカナダを旅した時に、同様の遡上する鮭とイクラの採卵所を見たことがある。正に同じような仕組みで見事な施設が作られていたが、それは全て、日本人の趣向を満たすためのイクラ加工の施設であった。アラスカ、カナダ、ロシアでも同様に毎年沢山の秋鮭が漁獲されるが、今では、北米やヨーロッパでも、日本食、お寿司がもてはやされ、大量の現地消費がある。外国で漁獲されるイクラも、日本に輸入されるものは限られている。
近年、母川である日本の河川に帰ってくるはずの鮭の数が少ない。20年前には23万トンあった漁獲量は、5年前には10万トンを割り込み、3年前には5万トンを割り込み、昨年、今年と更に年々落ち込みが続いている。毎年大量に稚魚を育てて、放流しているにもかかわらず、理由がわからない。温暖化の影響や赤潮や護岸工事の影響もあると言われている。
弊社のオリジナルのイクラは、青森県作られている。鮮度の良い前浜で獲れたての鮭の卵を地場の醤油のみで表面をコーティングしただけのその味は、弊社のお客様のプロからは『日本一』との呼び声が高い。
最近流行りのパンパンに膨らんでプチプチした食感の『イクラしょうゆ漬け』は、実はピンポンと言われ専門家では評価の低い皮の残るイクラの皮を、特殊な酵素で薄くして、多くの添加物が入った出汁醤油にたっぷり漬けて膨らましてあるため、浸透圧で中のイクラ本来の美味しい成分は外に出て調味料の味に変わってしまっているのである。
極めて残念なことに、今年は青森近海で、秋鮭の水揚げがほんの僅かしかなく、オリジナルイクラの製造は断念した。
そのオリジナルイクラに近い本来の美味しさをしっかりと表現したイクラを製造するメーカーが、北海道にも数社ある。標津のM社。寿都のK社。室蘭のS社である。
これらは全て、舌の肥えた弊社のお客様である寿司のプロからの評価でオリジナルイクラに負けない美味しさと高い評価を得ている自信作だ。
是非、この貴重な『海の宝石』を美味しくストレートに味付けしたイクラを、鮭への感謝を込めて、晴れの食卓で召し上がっていただきたいと切に願う。
株式会社グローバルフィッシュ
代表取締役 柿澤克樹
数ある食材の中でも全国津々浦々の弊社パートナー生産者の魂籠る日本の食材は「世界の財産」です。
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