『土用の丑』江戸時代の平賀源内の逸話から、盛夏の土用期間の丑の日に鰻を食べる習慣は今も日本の文化としてすっかり定着している。

天然鰻は、自然の残る青森、宮城、大分県等の河川や湖で秋から冬に脂がのった旬のものがわずかに水揚げされるが、毎年予約を受けている一部の専門店にのみ流通する大変稀少なものとなっている。

日本に流通する鰻の大半は養殖された日本鰻(ジャポニカ種)で、土用の丑の日に合わせて7月をピークに生産されている。最近では、価格が安い中国、台湾産の輸入ものが主流となっている。

日本国内でもシラス鰻(鰻の稚魚)の減少から生産量は減少傾向にあるが、愛知、静岡、高知、鹿児島あたりの陸上の池で地道に生産されている。

愛知一色の活鰻の選別風景

弊社では10年以上前から国内でも最高品質といわれている愛知一色産の鰻の蒲焼を専門に扱っている。鰻の蒲焼には蒸し工程が入る関東風と、焼き工程のみで仕上げた関西風があり、すき焼き同様東西文化の違いを見せながらも全国的に非常に人気が高いのだ。

鰻蒲焼

鱧は、天然のみで初夏から夏にかけて旬を迎え、特に京都を中心とした関西では夏の和食に無くてはならない食材で人気が高い。国内の主産地は瀬戸内海、豊後水道、長崎あたりとなる。

旬の味覚活〆鱧

穴子は、江戸前のお寿司、天ぷらには欠かせない大切な食材で人気が高い。梅雨穴子と呼ばれ、6月~7月にかけて川から栄養豊富な水が沢山流れ込む時期が最高の旬となる。

昔から特に東京湾羽田沖のものが最高と言われ、こだわりのあるすし職人はそれしか使わなかったくらいである。埋め立て等による環境変化から、東京湾では穴子が激減し、殆ど獲れなくなった。現在の希少な穴子の国内主産地は、島根県、長崎県対馬、兵庫県明石となっている。

水揚げの減少と価格高騰により、お寿司屋さんで食べられる煮穴子も今では日本のテクニシャンが教えた調理技術で味付け冷凍された、中国産が主体となってしまっていることはいささかの寂しさを覚えている。

活〆穴子
穴子の寿司

このように、プロの間では長物と言われる『鰻』『鱧』『穴子』は、実はすべて夏に旬を迎えるという共通点があるのだ。

昨今の猛暑はかつて経験したことのない、まるで亜熱帯にいるような気候で、『食』を元気の源として、皆様お健やかに、無事乗り越えて頂きたいと感じる今日この頃である。

(株)グローバルフィッシュ 柿澤克樹